ブログ・ニュース
高額療養費限度額引き上げ問題

円安・物価の高騰・令和の米騒動・年収の壁問題等、様々な問題が世間を騒がせています。
合わせて、高額療養費限度額引き上げ問題も話題となっています。
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額(健康保険適用分のみ)が、
ひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です。
上限額は年収によって決定されています。
近年、高齢化や高額な薬剤が保険適用されるようになることで、
医療費の高額化が進んでいて、全体の医療費に対する患者さんの負担額の割合が下がってきているため、
制度を維持するためにも高額療養費制度の見直しが必要、とのことで、上限額を引き上げることになりました。
今年8月から再来年8月まで段階的に引き上げ、年収による区分を細分化する方針が政府から打ち出されました。
70歳未満の平均的な年収(約370~770万円)の方のひと月の上限は、
現状では80,100円+αですが、2025年8月からは88,200円+αとなり、
その後は年収による区分が細分化されるので年収により異なりますが、
年収650~770万の方の場合、138,600円+αとなります。
現状と比べてひと月に6万円近く負担額が上がる計算です。
長期的な診療が必要な患者さんや団体から、
治療を選択できない
受診回数を減らさないといけない
治療を諦めざるを得ない等の不安の声が上がり、再度見直しの要請が相次いだことで、
2月14日に「多数回該当」部分に関しては、負担額を据え置くよう見直しすることが発表されました。
多数回該当とは、過去12カ月以内に3回以上、上限額に達した場合は、
4回目から上限額が下がる、というものです。
先ほどの70歳未満の平均的な年収(約370~770万円)の方であれば、
ひと月の上限額が44,400円となり、長期療養者にとっては、とても助かる制度です。
こちらの上限額も引き上げ予定でしたが、同額の44,400円に据え置きになったのです。
このこと自体はとてもよかったと思われるのですが、転職等で健康保険の保険者が変わった場合や、
治療をしばらく中断して再開した場合等は、再度3回以上限度額を超える条件を満たす必要があり、
その場合の上限額は改定後の上限額となります。
改定後の上限額を超えない場合はこの制度は利用できず、
多数回該当の方と同じ治療・治療費用が掛かっていても、
自己負担額がずっと掛かることになってしまいます。
多数回該当の方と対象にならない方との負担額の差がとても大きくなってしまいます。
また、今までの上限額には達しているが、改定後の上限額に達しない場合、
高額療養費制度の対象外となり、結果的にずっと3割負担をしていくことになります。
これは、治療と仕事を両立しようとする現役世代で上限額の引き上げ幅が大きくなっているので、
対象外の方が現状より多くなると思われ、その部分が懸念材料だと思います。
と、ここまでの話をまとめようとしていたところ、2月28日に政府はこの問題の一部凍結を表明しました。
2025年8月分は実施するが、それ以降の改定案についてあり方を見直す、としています。
この高額療養費制度の対象にはならない費用として、差額ベッド代や先進医療にかかる費用、
保険適用外の診療、自由診療等もあります。
そのような費用にもしっかり向き合いつつ、せめて、保険適用部分については、
健康保険の仕組みで安心して治療が受けられるように、今後の制度の見直しについて、
まだまだ流動的なので、様々な角度から検討してもらえるよう期待し、
自分ごととして注目していきたいと思います。
K.Hayakawa