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日進月歩のがん治療

仕事柄、日進月歩のがん治療に関する話題には、注視する。先日も日本経済新聞の朝刊に、次のような記事が掲載されていた。
がんの9割超を占める固形がん向けに、手術や放射線、抗がん剤、免疫薬に続き新たな治療法が現れた。遺伝子を改変した免疫細胞を使い、血液がん治療で実用化されている免疫療法を改良。中国のスタートアップが2023年に米食品医薬品局(FDA)への製造販売の認可を申請する計画で、米国企業や武田薬品工業も臨床試験(治験)を急ぐ。
〔日本経済新聞 2022年2月11日付 15面〕
従前、白血病などの血液がんで治療効果をあげている免疫療法のCAR-Tについては、例えば「国立研究開発法人日本医療研究開発機構」のホームページでは、現状について次のように記載されている。
免疫の力を使ってがん細胞を攻撃させる「がん免疫療法」が、従来治療が難しかったがんに対する新しい治療法として注目されています。免疫療法には様々な方法がありますが、この中でもキメラ抗原受容体導入T細胞療法、いわゆる「CAR-T(カー・ティー)細胞療法」は、患者さん自身の血液から主要な免疫細胞の1つであるT細胞を取り出し、CARという遺伝子を外から導入することで、がん細胞だけを選択的に攻撃できるように加工して製造します。このようにして作られたCAR-T細胞を患者さんに注射することで、特定の目印を出しているがん細胞を強力に攻撃することができ、一部の血液がん(白血病、悪性リンパ腫)に対して非常に高い有効性を示したことから、2019年から保険診療においても用いられるようになっています(図1)。同じような戦略で他の様々ながんに対しても、CAR-T細胞による治療効果が臨床試験を通じて検証されていますが、今のところ十分な治療成績は得られていません。また現在認可されている血液がんに対するCAR-T細胞療法においても、治療後に再びがん細胞が出てくる再発例が多く、さらに治療効果を高める必要があります。
〔 https://www.amed.go.jp/news/release_20211206-02.html 〕
これに対し、今回の日経新聞の報道によれば、「中国のスタートアップ、カースジェン・セラピューティクスは、(中略)CAR-T細胞に、胃がんや膵臓がんなどにくっつくたんぱく質を作る遺伝子を追加で組み込み、転移しやすいがんを追いかけて攻撃しやすいタイプにした」とのこと。つまり、固形がんの治療において、有効であることが期待できる可能性があるということである。この点、治験で効果が確認できれば、2023年以降に市場に出てくる可能性があるという。
一般的に、日本人ががんに罹患する可能性は約2人に1人と言われている。よって、がん治療の進歩がもたらす私達への恩恵は非常に大きい。と同時に保険について言えば、がん治療を医療費の部分で私達を支える役割を果たす「がん保険」について、各保険会社に対し「医療の進歩に即応するがん保険を提供する」ことを強く期待したい。
ともあれ、がん保険をお勧めする立場にある者として、今後ともがん治療に関する情報には、アンテナを高く張っていきたい。
H.Enoki