ブログ・ニュース
火災保険の損益は〝10年連続赤字〟

実は、損害保険大手4社の火災保険の損益は、〝10年連続赤字〟である。日本経済新聞の報道によれば、2021年3月決算も赤字となる見通しで、もしもそうなれば〝11年連続の赤字〟となる。一般的に火災保険は、損保各社の収入の15%を占めると言われており、〝頭の痛い問題〟である。
さて、ここで具体的な赤字の金額にフォーカスしてみたい。報道によれば、2020年4~9月(半期)の赤字額は、いわゆる損保大手4社といわれる『東京海上日動』『損保ジャパン』『三井住友海上』『あいおいニッセイ同和』の合計で2350億円。これは、前年同期比の赤字額を4割近く上回っている。年間を通した通期決算の見通しでは、4社合計で2000億円超の赤字まで改善できる模様であるが、年末年始に東北・北陸地方を中心に発生した大雪による雪害を新たな要素として考慮すると、より厳しい着地となることも十分に想定される。
火災保険の保険金支払額は、2,3年前は超大型台風の被害を中心に、2年連続で1兆円越え。他方、昨年は台風の上陸がなかったにも関わらず、損益でみれば、一昨年を上回る赤字の恐れ。一体、どのような要因によってこのような結果へと至るのであろうか。
その要因については、いくつかの指摘がある。1点目は再保険費用の上昇である。近年、大規模な自然災害が頻発するようになった為、再保険の費用は2020年4月の段階で、概ね5割ほど上昇したと言われている、この点、過去の発災実績を反映して保険料率を改定するやり方では、状況の変化に対応しきれなくなっている。
2点目は、企業設備の老朽化である。消防庁によると、2019年度の「鉄鋼や化学の工場・倉庫」などの『危険物施設』の火災事故発生件数は、10年前と比べて3割強増加した。この主な要因は、設備の老朽化と考えられている。いわゆる〝業界バナ〟とでも言おうか、私の耳にも、企業そのもの流れとして全社的に設備投資をまったく行えていないある特定の会社が、「老朽化の必然的な流れとして毎年のように火災保険金を受け取っている」なんていう話も聞こえてきたりすることが・・・。ともあれ、身近なところでも、「ニューノーマル」の主流は「在宅勤務」である。住宅における「不足かつ突発的な事故」には、十分に注意していきたいものである。
話が少し脱線したが、ともかくこれらのことから言えることは、損保各社は、もはやこれまでの火災保険料の決め方では採算が取れない、構造的な問題を抱えているということである。
時節柄、景気は悪い。今後の経済の見通しも、本当に心配である。このような中でクライアントに対し、毎年のように火災保険料率の改定をご案内することは、心苦しい限りである。もちろん、自分の自宅に付保している火災保険料の増加も、喜ばしい話ではない。だが、『料率改定』という結果の背景には、複雑に絡み合った様々な要因が幾重にも重なりあって存在していることにも、私たちは理解を深めていかなければならない。
H.Enoki